大久保祐作・會場健大, 2019,「p値とは何だったのか : Fisherの有意性検定とNeyman-Pearsonの仮説検定を超えるために」『生物科学』70(4), 238-251

 非常に勉強になる論文を読んだので共有します。

 

大久保祐作・會場健大, 2019,「p値とは何だったのか : Fisherの有意性検定とNeyman- Pearsonの仮説検定を超えるために」『生物科学』70(4), 238-251
 

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 p値の話です。アメリ統計学会が2016年に「有意水準が満たされるか否かだけにあらゆる判断を委ねるべきでない」という趣旨の声明を出して以来、社会科学においても安直にp値に頼るのは躊躇われる風潮があります。
 

 この論文は、Fisherの有意性検定とNeyman-Pearsonの仮説検定まで遡り、両者におけるp値の捉え方や目的の相違を比較しながら、我々をp値の正しい理解に導いてくれます。具体的には、データの収集環境や実験の条件等によりp値の理解の仕方が異なってくるため、自身の研究におけるデータの性質(無作為化や反復、条件管理が可能か)、研究の目的(験証なのか反証なのか)によって、p値の解釈に気を付ける必要があることに気づかされます。研究者だけでなく、様々な立場の方々にもご一読いただきたい珠玉の論文です。統計学に関する最低限の知識は必要ですが、数式は全く出てきません。というより、p値と他の基準指標との数学的な関係性よりも、それぞれが必要とされた文脈や目的に記述の比重が置かれています。