(研究構想)新聞とTwitterの議題設定機能の比較

2カ月くらい前から考えていた、伝統的メディアと新しいメディアの関係についての研究が具体的な調査設計レベルに落ちてきたのでここに記しておきます。この研究は、別の角度から見れば、ネット世論の正体を明らかにすることに貢献するかと思います。

 

(問題意識)

RQ1 Twitter議題設定効果はあるのか?

RQ2 Twitterに議題設定される人はどのような人か?

新聞を「垂直型メディア」、Twitterを「水平型メディア」と捉え、双方の議題設定効果を比較します。基本的には、それぞれのメディアの争点の順位と公衆の争点認知の順位を比べてスピアマン順位相関係数を見ます。さらに、上記RQの通り、どのような人がそれぞれのメディアに議題設定されるのかを探索的に調査しようと思っています。指標は、デモグラフィック情報に加え、メディアリテラシー、メディア利用行動、生活満足度、イデオロギーの左右、ネット上の政治的な議論についてどう思うか等です(他調査中)。

 

(方法)

次回衆議院選挙時(年度内に選挙がなければ年度内の適宜のタイミング)に、選挙一カ月前から新聞の内容分析、Twitterのログデータ分析を行い、「コロナ対策」に関連するattributes(属性)で、言及される頻度を洗い出します。例えば、外出自粛、経済への影響、ワクチン開発、経済対策等、様々な属性が考えられます。これはどういう順位になるかは内容分析をしてみないと分かりません。

一方で、選挙後に別途サーベイ調査を行い、「コロナ対策」で新聞とTwitterで上位に挙がった属性について、それぞれどの程度重要かを尋ねていきます。これでマクロ的には、新聞とTwitter議題設定効果の比較が可能になります。

加えて、(問題意識)で触れたRQを確かめるために、それぞれの指標の点数ごとにグループを分け、他の変数を統制した上で相関係数の比較を行います(この点に関しては、もっと信頼性の高い方法があるかもしれないので、勉強中です)。これで有意に差が出れば、RQ2に対しても一定の回答が与えられるでしょう。

 

(背景)

マス・コミュニケーション効果研究における主要な分野に「議題設定効果」というものがあります。これは例えば選挙時などに、マスメディアが報道する争点が人々の頭の中の争点(公衆アジェンダ)に影響を与えるという理論で、これまでに400近くの実証研究が重ねられています。

研究初期においては、新聞やテレビの内容分析から争点を順位付けし、それをサーベイ調査の項目に入れて公衆アジェンダの順位を出して比較するというやり方が主流でした。ここ10年くらいは、Twitterをメディアであると共に公衆アジェンダと見立て、新聞とTwitter間のintermediaの議題設定機能を明らかにする研究が蓄積されています。こうした研究においては、新聞とTwitterの時系列データを集めた上で、グレンジャー因果推定を行い、双方がどのように影響を与えるかを見ています。

それに対して私の研究は、Twitterを純粋にメディアと捉えます。というより、Salganik(2018)も指摘しているように、やはりTwitterのログデータを公衆アジェンダの代わりに用いるのはバイアスが大きすぎます。

そして、私の行政官としての経験から、日本において議題設定を行っているのはやはり伝統的メディアであるという直観があります。しかし一方で、役所を辞めてからは、Twitterを始めとするSNSの力の大きさを日々感じています。これからの行政はTwitter世論をも大切にしなければならないのでしょうか。特に今回のコロナ禍においては、Twitterはかなり荒れていたように思います。こうした背景から、上記のRQに至ったわけです。

今後の野望としては、科研費を取り続け、選挙の度に調査を行ってRQ1及び2に対する回答がどのように変遷していくかを見ていきたいと考えています。